大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(新う)424号 判決

本件起訴状の記載を観るに、所論の如く「被告人が遊興を好み金銭に窮し昭和二十二年十一月頃から同二十三年一月頃迄の間藷菓子の斡旋により利益を得んとしたるも却つて損害を受け一層自棄的に遊興を重ね之が損害補填と遊興費に当てる為多額の金員を得んと企て判示詐欺の犯行に及んだ旨」の記載があることは明白である。所論は該記載を以て刑事訴訟法第二百五十六条末項に違反し同法第三百三十八条第四号に該る場合であると主張するのである。成る程刑事訴訟法第二百五十六条末項は裁判官に予断を生ぜしむる虞れのある書類その他の物の添付又はその内容の引用を禁止し、証拠調の段階に先立つて不当に心証を形成させまいとする顧慮をしている。即ち当事者は公正な態度を以て攻撃防禦の手段をつくさねばならぬというのである。従つて起訴状の記載自体についても犯罪構成要件及び之と直接関連ある犯罪事実の記述上不可欠と目される如き事実を除き、審判に先立ち裁判官に不当の印象を与える虞あるが如き事実の記載も亦以上に準じ許されないものと認めるべきである。然しながら偶々起訴状に一見前記に副わない記載があつたとしても常に裁判官をして予断を抱かしめるものとはいえないし却つて裁判官に予断を生ぜしめる虞ある事実の記載ではないと認めて然るべき場合が多多あり得ることを認めなければならない。

而して之の点からいえば本件起訴状の前記記載の如きは概して犯罪の動機の記述として為されたものであつて、犯罪の構成要件に鑑みるときは、その犯罪の遠因に関する部分の如きは之を記載することを省略した方が可であつたとは認められるが、之を記載すればとて必しも前記法条の趣旨にもとり起訴手続の無効を来すものとは認められない。即ちかかる程度の不相当の記載があればとて裁判官に判示犯罪の成否につき予断を生ぜしめるべき毫末の懸念すらもないからである。よつて前記記載を捉えて公訴提起の手続がその規定に違反した為無効であると論ずるを許さない。

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